鉛筆で書いた文字を消すと、机の上に消しクズが残る。掃除の邪魔に見えるこのクズは、実は「うまく消えた結果」でもある。消しゴムは黒鉛を紙から離すだけでなく、黒鉛を取り込んだ自分の表面も少しずつ切り離しながら働いている。
鉛筆の文字は、紙から引き離して消す
トンボ鉛筆の技術解説によると、鉛筆で書いた文字は黒鉛の粉が紙の目に入り込んだ状態になっている。消しゴムをこすると、その表面の力で黒鉛を紙から引き離し、消しゴム側へ取り込むことで文字が消えていく。
だから、消すという動作は、インクのような色を化学的に透明にしているわけではない。紙に付いた黒鉛の粉を、物理的に紙から離して回収している。
消しクズは「次に消す」ためにも必要
黒鉛を取り込んだ消しゴムの表面はだんだん黒くなる。そのままでは同じ面を使い続けることになるが、こすっているうちに黒くなった部分が消しクズとして離れ、下から新しい表面が現れる。すると、また次の黒鉛を取り込める。
つまり消しクズは、ただ削れて無駄になった部分ではない。黒鉛を抱えた古い表面を外へ出し、新しい表面へ交代する仕組みの一部でもある。もし黒くなった表面がそのまま残り続ければ、次の場所で新しい黒鉛を取り込む面も更新されにくい。文字を消すたび、消しゴム自身も少しずつ小さくなるのには理由がある。
机の上の細かなクズは、消しゴムが「汚れた面を捨てた跡」と見ることもできる。
「消しゴム」なのに、ゴムとは限らない
名前にも少し意外なズレがある。トンボ鉛筆は字消しを大きくゴム字消しとプラスチック字消しに分けており、すべてがゴム製ではないため、材料の面では「字消し」という呼び方の方が正確だと説明している。
ラバー消しゴムの主な材料は天然の生ゴム、サブスティチュート、研磨材。一方、プラスチック消しゴムの主な材料は塩化ビニール樹脂、可塑剤、細かな研磨材で、同社の説明では塩化ビニール樹脂製が主流とされている。
つまり、店頭で「消しゴム」と呼ばれていても、その名前だけから素材をゴムだと決めつけることはできない。同じ「文字を消す」道具の中に、異なる材料の系統が並んでいる。
「消しゴム」という名前は昔ながらでも、中身も、消える仕組みも、思っているより機械的だ。ゴム製とは限らない材料で、紙から黒鉛を引き離し、取り込んだ面をクズとして捨て、また新しい面を出す。何気ない四角い文房具は、自分を少しずつ更新しながら文字を消している。

