ヤマネは冬眠する動物として知られている。けれど、その言葉から「冬のあいだはずっと眠り続け、一度も動かない」と想像すると、実際の姿とは少しずれる。九州で行われた野外研究では、冬の活動が意外にはっきり記録されている。
日本だけにいる、小さな天然記念物
文化庁の国指定文化財等データベースでは、ヤマネは1975年6月26日に天然記念物に指定されている。詳細解説では、一属一種の日本特産種で、本州・四国・九州の山地帯に分布し、樹洞などで冬眠する哺乳動物とされる。
つまり、冬眠すること自体はヤマネのよく知られた特徴だ。ただし「冬眠する」という説明だけでは、地域ごとの冬の過ごし方までは分からない。そこで面白いのが、九州南部と北部で行われた自動撮影による調査だ。
九州南部では、真冬にも姿が写った
鹿児島県大隅半島南部で行われた研究では、2013年12月から2014年2月にかけて、巣箱と自動撮影カメラを使ってヤマネの冬期活動が調べられた。結果として、真冬にも活動する個体が撮影されている。
研究者らは、九州南部では冬眠期間が短い可能性や、暖かい時期に一部の個体が覚醒して活動している可能性を示している。さらに、暖冬には冬眠しない個体が現れる可能性にも触れている。少なくとも、この地域では「冬になったら全個体が春まで完全に動かない」と単純化できない。
北部でも「冬じゅう」ではなかった
長崎県多良山系で30か月にわたって行われた別の調査でも、ヤマネは冬の一時期を除き、ほぼ通年で高頻度に撮影された。冬眠に相当する非活動期は、12月中旬または1月上旬から2月下旬までの、2か月以上3か月未満だった。
南部と北部の研究を合わせると、ヤマネの冬眠は全国どこでも同じ長さ、同じ状態で続くものとは限らず、地域や気温条件によって活動の現れ方が異なり得ることが見えてくる。もちろん、九州の二つの調査だけで全国のヤマネを一括して説明できるわけではない。それでも、「冬眠する」という分類と、実際にいつ活動するかは別の話だと分かる。
冬眠は、スイッチを切るように冬の全期間を一様に止まって過ごす、と考えるより、環境に応じた休眠と活動の組み合わせとして見る方が、これらの観察結果には合っている。
「冬眠する」は間違いではない。でも、その一言の内側には、冬でも目を覚まして動く個体や、土地によって違う休眠期間がある。小さなヤマネの一年は、教科書的な一語より少し複雑だ。


